気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

とんでもないわがままを言っているのはわかってる。

せっかくご厚意でいただいたお金と優しさを無下にして。

不敬極まりない。



「お手間はかけさせません。場所を教えていただければそちらに伺います」

『はあ……面倒くせえなあ』


スマホ越しに、煙草の煙を吐き出すような長いため息が聞こえた。

直後。



『じゃあ俺に抱かれに来い』

「………は、……ぇ?」


固まる。

“抱かれに来い”。


……この会話の流れで冗談を?

ううん、ずいぶん投げやりに放たれたセリフではあったけど、冗談を言っているようには聞こえなかった。



『金額に対して働きが足りねえって思う分を体で返せってハナシだよ』

「………、」


話は……理解できる。

私はお金を返したくて、歴くんは受け取りたくない。

だから、お互いの意志をフラットに解消するには、とても理にかなった提案……。
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