気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「この出来損ないめ!」
高く上がった手が、容赦なく振り下ろされる。
抵抗虚しく、体は衝撃とともに床に倒れた。
脳震盪を起こしたのか、視界がぐらぐら揺れる。しばらく立ち上がることができなかった。
「婚約を破棄されるなんて、黒菊の恥もいいところだわ。本当に、どうしてこんな子が生まれてきたのかしら」
本邸に帰ってきてから、ずっとこの調子。
「あなたに贅沢品を持つ資格なんてないわ」
「あ……、」
スマホが奪われた。
バイト代で買ったスマホ。月々の分割払いで契約して、まだ払い終わってもいないのに……。
動きの鈍くなった頭でそんなことを考える。
義母はしばらくして部屋を出ていったけれど、父の怒りは収まることなく暴力と化して私を襲い続ける。
「………だったらよかったんだ……」
首に手をかけられた。
「“死んだ”のがお前だったらよかったんだ!」
──感じるはずの痛みが、ない。