気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

朝が来るたびに、今日こそは大丈夫だと言い聞かせていても、不運な出来事は連鎖する。



翌日、出勤すると、きらりさんの異動が決まったことを聞かされた。


新店舗のオープンに伴い、優秀なきらりさんが見事引き抜かれたという話で、

最後に挨拶をと思ったのに、簡単なお別れ会がよりによって私がいない昨日に開催されていたらしい。


ずいぶん急なことだったので他のキャストさんやスタッフさんもびっくりだったんだとか。


すごくショックでしばらく言葉が出なかった。

スマホがないから、今までのお礼すら伝えられない。


そして、このお店の新しい店長は、No.1のラムさんになっていた。



「ノアちゃん、4番卓ご指名です!」

「は、はい……っ」


スタッフさんに声を掛けられ、テーブルに急ぐ。

見ると、前に一度ヘルプで席につかせてもらったことがあるお客様だった。



「お帰りなさいませ、旦那様」

「は〜〜仕事で疲れたあとはノアたんの顔を拝むに限るよ」
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