気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
イライラが募っていたのか、突然、荒ぶったように大声を上げられ。
驚いたはずみで、運んできたドリンクを落としてしまった。
「も、申し訳ございません……」
すぐにスタッフさんが駆けつけてきて、大沢さんをなだめに入る。
私の指名が他のお客様と被っているという説明を聞いても、大沢さんの怒りが収まることはなく。
「被りがいたって席につく時間が明らかに短いだろ! 僕のほうがずっと前からノアたんのこと好きなのに!!」
ついには、テーブルにあったお皿までひっくり返してしまった。
大沢さんのこんなに低い声を初めて聞いた。
頭の中で父に暴力を振るわれたときの記憶と重なり、
散らばったお皿を片付けなくちゃと思うのに、体が震えてうまく動かない。
「お客様、落ち着いてくださ───」
直後、鈍い音が響く。
大沢さんに殴られたスタッフさんが、床に倒れていく様子がスローモーションで目に映る。
その光景をただ呆然と眺めていた。