気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

新店長のラムさんによって、キャスト全員が休憩室に集められた。


「10万円入ってた袋ごとなくなってますー。疑いたくはないけど、皆ひとりずつロッカーの中身見せてね」


そう言ってみんなのロッカーの鍵を回収すると、ラムさんは順番にチェックし始めた。

ロッカーの中だけではなく、バッグの中身まで念入りに確かめている。


10万円もなくなったんだから当たり前だよね。

仮に誰かが盗んだんだとしたら、私みたいにお金に困っていたのかな……。


と、考えた矢先に。



「ねえ。ノアちゃんこれ何?」


ラムさんの冷えきった声とともに、全員の視線が一気に私に集まった。


──………え?


ラムさんの手には、四角いチャック式の袋。

私も見たことがある、いつもはレジ下の金庫にあるお金だ。


反対の手には……私のカバン。


どう、して……?


電源が落ちるように、目の前が真っ暗になった。
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