気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
病弱だったお母さんは、私を産むのと引き換えにこの世を去ってしまった。
お母さんを愛していたお父さんは、それが理由で私を恨んでいる。
お母さんとの思い出を打ち消すかのように、今のお義母さんと結婚して。
瑠衣だけを可愛がり、私を徹底的に視界に入れないようにしていた。
あのお義母さんだって、初めの頃は優しかった。
だけど、私が成長するにつれてお母さんの顔に似てきたことで態度が変わっていった。
ふたりの私を憎む気持ちは痛いほどよくわかる。
私に大事な人をとられたんだ。
全部……私が生まれてきたせい。
「──叶愛」
遠くから誰かに呼ばれた気がした。
でも……空耳に決まってる。
この期に及んで私を必要とする人がいるわけない。