気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
覇王の玩具
𓆸 𓆸
甘さを燻らせたような香りに誘われ意識が浮上する。
目が覚めたはずなのに体はまだ伴わない。
ぐったりとした手足をどうにか動かそうとしたけど無理で、とりあえず瞼を持ち上げてみる。
灰色の天井を、しばらく焦点の合わないままぼんやりと見つめた。
コンクリで固めたような無機質な壁……。
もしかしてここは刑務所だったりするのかな。
お店のお金を盗んだ容疑で放り込まれたのかもしれない。
それともあの世?
あんなに寒かったはずなのに、今はすごくあったかいし。
記憶を辿ろうとしても、深い靄に覆われてちっとも先に進めない。
そういえば……意識が途切れる前、誰かに名前を呼ばれたような気がする。
「……叶愛」
そう、こんな風に……。
…………って、……え?