気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
まだなんとなく鈍い体を動かして部屋を出ていこうとすれば
「お前の家のこと調べた」
と。
短いセリフに制されて、心臓が冷たく脈を打った。
「そっちの使用人に口を割らせたんだ。離れにいる理由までは聞かなかったけど、なんとなく想像はつく」
「……、………」
衝撃のあまり声も出ない。
立ち尽くしていると、彼はさらに続ける。
「蘭野家との縁談があった話も聞いた。まだ十七の子を嫁がせようとするほど、黒菊家ってやばいんだな」
私に尋ねているというより、確信をただ述べているように見えた。
──知られてしまった。
よりによって京櫻家の人間に……。
打つ手もないので、もはや呆然とするしかない。
「私が黒菊の娘だって……初めから気づいてたんですね」
「似た人間は世の中に山程いるけど、お前は血筋の良さが隠しきれてない」
「…………」