気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
血筋の良さなんて見た目で判断がつくものとは思えない。
やっぱり、店先で出くわした日にメガネをしてなかったのが原因だったのかな……。
ううん、この人の前に立てばメガネがあってもなくても関係なく見透かされそう。
いつだって退屈な瞳をしているのは、既にこの世のすべてを知り尽くしているからなのかも、とか。
ありえない想像をしてしまう。
……恐ろしいなあと、絶望の中で改めて感じた。
「私のこと、知ってて気づかない振りをしてたのはどうしてですか」
「どうしてだと思う?」
「……正体に気づかない振りをしたまま私を泳がせるのが、面白かったから……?」
「生憎そーいうのを面白いって思う感性備わってねぇんだよ」
「………」
「叶愛。俺と結婚しよーか」
あまりに噛み合わないやり取りに、またも思考が行き詰まる。