気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
結論から出せば、結婚なんてできるわけない。
ましてや裏社会に生きる京櫻家の息子と、だなんて。
「結婚、は……意味が、わかりません」
「一般的に言えば籍入れて一緒に住んで子どもつくって幸せな生活を送ることだな」
「そ、そういう意味じゃなくて……っ。そもそも歴くんにはなんのメリットもないのに」
すると歴くんはようやく、くすりと笑った。
「俺がメリットなしに女に結婚を迫るとでも?」
甘い匂いが鼻をかすめて、不覚にも、どきりとする。
今もなおトップで栄華を誇る京櫻家が、衰退した黒菊家の娘と結婚することで得られるもの……なんて、あるんだろうか。
「メリット……。黒菊家を乗っ取れること、ですか?」
うちを乗っ取っても利益なんてたかが知れてるのに……。
そんな思考を遮るように、相手の影がかかり。
「んーん違う。叶愛を俺の好きにできること」
耳元で甘い声が囁いた。