気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

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部屋を出ていこうとしていたはずの私は、いつの間にか歴くんの手によってベッドへ沈められていた。


ほんとに……意味がわからない。

この人の考えていることは特に、一生わからない気がする。


今回は早々と諦めて、思考を手放した。


つい先日、突然婚約を言い渡されて、突然破棄された身。

今さら別の男性に結婚を申し込まれたところで──たとえそれが京櫻家の息子だったとしても、

まあ人生こういうこともあるか、と受け入れられるくらいの耐性はついていた。


吉、凶、どちらに転んでもいい。

私みたいな、なんの価値もない体でも、好きに使ってもらえるなら。

それ以上の幸せはないんじゃないか……とすら思う。



「どうする叶愛。俺と結婚する?」


綺麗な黒髪がさらりと流れる様子を見つめながら、私はそっとシーツを握りしめる。


「はい。……歴くんの好きに使ってださい」


そう返事をしたと同時のこと。
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