気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「あれ……?」
ベッドがある部屋に戻ったはいいものの、歴くんがいない。
まろんは変わらず黒ソファの上で眠っている。
どこに行ったんだろう……。
室内の明かりはついたまま、荷物もそのまま。
その他もとくに変わった様子はない。
「歴、くん……?」
しんとした室内に自分の声があっけなく溶けていく。
もしかして、私みたいな女抱けるわけないって途中で正気に戻って、出ていっちゃったのかな。
お風呂で温まっていたはずの体がすうっと冷えていく。
「……っ、……」
さっきは堪えた涙が、ぽたりと床に落っこちた。
おかしいな。
家にひとりでいるときは泣いた記憶なんて全然ないのに、急にどうしたんだろう。
さっきまろんがご飯を食べていたときといい、路地裏で倒れたあとから、私はどこか壊れてしまったのかもしれない。
おかしい。次々に溢れてきて止まらなくなった。
ついには顔を覆ってしまい、子供みたいだと余計みじめになる。