SENTIMENTALISM
網戸になった窓からシトシトと雨の音がする。
あぁ、ついに降り出したのか。
「綾子さん、慧斗を解放してあげて」
綾子さんの眉がその名前にピクリとする。
「……慧斗のことがすきなのね」
あたしはゆっくり頷く。
それを見た綾子さんは押し黙って天井を見上げながら煙草の煙を吐いた。
「……もう瞳のことも知ってるの?」
「知ってます」
「それでもすきなの?」
慧斗はいつも笑ってる。
いつも瞳さんのことを隠しながら笑ってる。
あたしを見てるような視線があっても、心ではいつだって瞳さんの方を見ているんだ。
それでもあたしは、
「すきです」