SENTIMENTALISM
驚愕した。あたしは目を大きく見開いて、彼の力無く微笑む顔を見つめる。
「……なんで…?なんでありがとうなんて…」
だって、あたし何も出来てやしないじゃない。
偉そうな理屈ばかり並べて、結局は非力なだけの人間だった。
「俺のために綾子のところまで動いてくれたこと嬉しかった」
キラキラ輝く空があたしたちをオレンジ色に染める。柔らかい風が髪を撫でて遊んでいくのが少しこそばゆい。
「りくに初めて会ったとき、あまりにも瞳に似ててビックリした。それから怖かった。りくを瞳の変わりにしている自分がいたから……。瞳とは違うんだって、言い聞かせるために違う女から貰ったもの全部りくに押し付けてた……」