SENTIMENTALISM


「ここだよ」

立ち止まった先を見上げてみると、そこは極普通のマンションが建っていた。

「梨沙の家?」

「違うよ。知り合いの家。白河慧斗って言うんだけど、同じクラスのお嬢サマのお誕生パーティーで知り合ったんだ」

“お嬢サマ”
その言葉に侮蔑と嘲笑が込められているのは、すぐにわかった。

足早に中にはいっていく梨沙の後を追う。

エレベーターの中、梨沙は7回のボタンを押して、気だるそうに壁にもたれる。

彼女の細い指が慣れた手つきで煙草の火をつけた。

「糞つまんないパーティーに、慧斗もお嬢サマの彼氏として来てたの。まぁ後から聞いた話、慧斗にしたらただの金ヅルでしかなったらしいよ。で、つまらない同士抜け出したってワケ」

煙草の煙を吐きながら悪戯っぽく笑う梨沙の横顔を、あたしは純粋に“似合わないな”と思いながら見ていた。


その姿は、まるで大人になりきれない背伸びした子供そのものに見えた。



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