SENTIMENTALISM
梨紗が携帯のメモリから誰かに繋がる番号を探し当てて、発信した。
「もしもし?今から会えます?二人でいるんですけど……やだぁ、アハハハ!うんうん。6万?えー………8万!」
梨紗の携帯には一番目の彼氏から貰ったブランド物のストラップが繋がっている。
それが時折きらきら反射して、あたしの目に飛び込んでくるものだから
眩しくて目を反らした。
目を反らした先に、一組のカップルが幸せそうに笑いあいながら手を繋いで歩いている。
あたしは、ぼんやりその恋人達を眺める。
クラスの連中もこぞって誰かの"恋人"になりたがって、毎日が告白大会だ。
そこに意味はあるのだろうか。
そこに特権はあるのだろうか。
愛を、見つけたら
自分はどうなるのだろう。
あの頃から消えない空虚感は埋まるのだろうか。
あたしはまだ誰かと付き合うということを考えたことがない。
「りく、決まったよ。二人で8万。いこ!」
梨紗がいつもの笑顔で、あたしの腕を掴んだ。
あたしは恋人達の背中と反対の道を梨紗に引っ張られながら走った。