SENTIMENTALISM



なんでだろう。
一週間ぶりに会った梨紗は、こんなに近くにいるのに遠い人のようだ。


「ねぇ、りく」

さっきより落ち着いた口調であたしの名前を呼ぶ。

久しぶりに梨紗から聞いたあたしの名前は、とても新鮮で胸がドキリとした。

「……なに?」

あたしが返事をしても梨紗はまだ振り返らないまま話はじめる。

「あたしね、彼氏が何人いたとしても一人も本気じゃなかった。だけど、好きでいてくれるなら一緒にいた。そうすれば少しは寂しくないもの。あたしを必要としてくれてるって思えるから」

風が、冷たい。
髪が、なびく。

「だって、本当に好きな人はあたしを見てくれないんだもの」
"本当に好きな人"
その単語に、ハッとする。


「三年前、慧斗は今みたいに女の子とっかえひっかえなんかしてなくて、たった一人の彼女を愛してた。雪野瞳っていう特別可愛いわけじゃないけど、とても優しい女の子」

"雪野 瞳"
聞いたことのない響き。

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