SENTIMENTALISM


「……なんか…頭、混乱して……訳わかんないや……」

玲の匂いが、体温が、感触が、あたしの思考をストップさせる。

まるでトリップにはまったかのように、あたしはこの腕の中から動けない。

「……別に分からなくていい。ただ、俺が勝手に想ってただけだから」

「……あたしは…嫌われてるのかと思ってた…」

「鈍いんだよ、お前」

「……違うよ。玲が、ポーカーフェイスだから」

「なにそれ」

玲は零すように小さく笑った。

いつも玲は静かに笑う。

あたしはそんな玲の笑い方がひそかに好きだった。

落ち着くから。
嘘もごまかしもないから。



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