SENTIMENTALISM
玲の唇がゆっくり開いていくのをあたしは固唾を飲んで見つめる。
「梨紗が言ったことはだいたい本当なんだ。慧斗には雪野瞳っていう彼女がいて、今みたいに女で遊んだりしていなかった。二人とても幸せそうで、誰にも入り込めない空間みたいなのがあった。だけど瞳は死んだ。自分の意思で」
それはまるで悲しいお伽話を聞いているようで、現実味がないのにあたしはその話にのめり込まれていく。
胸がズキン、ズキンと痛い。
「理由は―――瞳は自分を売ったんだ。綾子経由で」
玲の乾いた声が耳の奥に詰まる。
「それ……って…」
「そう。お前みたいに知らないうちに、売られたんだ」
体が急に寒気をおこしてあたしは自分をぎゅっと抱きしめた。