SENTIMENTALISM
「たった1回。だけどその1回が瞳を苦しめた。騙されたとはいえ慧斗を裏切ってしまった自分が許せなかった……遺書には震える字で慧斗にあてた"ごめんね"が何度も書き記してあった」
もし、あたしがあのとき
運よく逃げ出せなかったらあたしは今頃どうしていたのだろう。
知らないオヤジの感触を一生背負わなければいけなかった。
想像するだけで怖くてたまらない。
その恐怖を目の当たりにした瞳さんを想うと、胸が張り裂けそうだ。
愛して、愛されて
雪野瞳と慧斗の愛は誰にも触れることが許されないくらい
強く、儚いものだった。
「慧斗は遺書を顔に押し当てて声にならないくらいに泣いてた。誰も何も声をかけなられないくらい」
「………綾子さんは?」
「慧斗は綾子を責めなかった」
「どうして?!?」
「慧斗が生きてこれたのは、綾子のおかげだから……」
玲は悲しそうに微笑んだ。
「……え?」
それは残酷な連鎖だった。