それでもキミと、愛にならない恋をしたい
改札を抜け、周囲を見回した先輩が、壁際で立ち呆けている私に気が付いて片手を上げた。
白いTシャツに黒のスキニーパンツ、オーバーサイズのミリタリーシャツというシンプルな格好だけど、長身でスタイル抜群なおかげで、ファッション誌から飛び出してきたモデルさながらの出で立ちだ。
学校のダサい体操服だって着こなしてしまうんだから私服姿の破壊力たるや抜群で、まだ挨拶すら交わしていないというのに、私の心臓は限界まで速いリズムを刻んでいる。
手を振り返すこともできないまま、先輩が目の前までやってきた。
「おはよう。早いな。待たせた?」
「おはようございます。いえ、全然」
なんとか平常心を心がけて挨拶を返し、首を横に振る。
まだ約束の時間の十分前。私が早く来すぎてしまっただけで、先輩が遅れたわけじゃない。
待ち合わせのお決まりのやり取りをしていると、近くを通り過ぎる人がちらちらこっちを見ていることに気がついた。