それでもキミと、愛にならない恋をしたい
ほとんどが楓先輩のカッコよさに思わず見惚れているハートマークがついた矢のような視線だけど、中には隣に立つ私を値踏みする鋭いものもある。
これほどイケメンでスタイルのいい先輩の隣にいるのが平凡な私だから、どういう関係なのか気になって見てしまうんだろう。
これまでの私なら卑屈になってしまいそうなところだけど、お守りにしている言葉を頭の中で再生する。
『〝なんか〟呼ばわりするなんて、菜々本人でも許せない。菜々を貶めるのは、菜々を大好きだって思ってる私のことも貶めてるのと一緒だよ』
京ちゃんが伝えてくれた思いが、私を少し強くしてくれる。
四方から感じる視線をシャットアウトして、意識して背筋を伸ばした。
せっかくふたりで出かけられるんだから。緊張しすぎたり卑屈になったりしていたらもったいない。
それに今日は勉強を教えてくれた先輩にお礼をしたいと思ってるんだから、ひとりで空回ってないでちゃんとしないと。