それでもキミと、愛にならない恋をしたい
……あれ、待って。そもそも今も手を繋いでるんだから、今私が楓先輩のことが好きで心臓がーって思ってるのも、全部伝わってるんじゃない?
今更な事実にハッとして目の前の先輩を見ると、再び手で顔を覆って項垂れている。
「か、楓先輩……?」
「……菜々、勘弁して。可愛すぎる」
そう呟いた楓先輩も、全部の心の声を聞かれていたと気付いた私も、たぶん同じくらい真っ赤だ。
だけど、繋いだ手は離さないまま。
「ジンクスって、当たるんだな」
「え?」
「気付いてた? このゴンドラ、紫だったの」
「えっ! そうだったんですか?」
ライトアップに夢中になっていて慌てて乗り込んだから、結局何色のゴンドラだったのか見るのを忘れていた。だけど、まさかひとつしかない紫色に当たっていたなんて。