それでもキミと、愛にならない恋をしたい
第五章
十一月二週目の土曜日。お父さんの運転する車で四十分ほど走り、広大な敷地を持つ公園墓地へとやってきた。
以前住んでいたマンションもこの近くにあり、年に何度かは訪れる場所なため見慣れた景色だ。
墓石を掃除した後、お母さんが好きだったダリアを使った花束を花立に入れる。真っ白なダリアの花束は、まるで結婚式のブーケのよう。それを持っているのが、ふたり目の妻を迎えたおじさんだなんて似合わなさすぎる。お母さんの命日だというのに、私は刺々しい気分で墓石の前に立った。
七年前の今日、お母さんは病気でこの世を去った。
それからずっと命日とお盆、それからお母さんの誕生日には必ずダリアの花束を持って、ふたりでここを訪れている。
お父さんが再婚してからここに来るのは二回目。今、どんな気持ちでお母さんに手を合わせているんだろう。
『結婚を前提にお付き合いをしてるんだ』
突然聞かされた話に、頭も心もついていけなかった。頭の中は真っ白で、なにも言葉がでなかった。
賛成とか反対とか、そういう段階でもなくて、ただお父さんがお母さん以外の人と結婚する決断をしたことにショックを受けた。