それでもキミと、愛にならない恋をしたい
その後、事故に遭いそうなところを楓先輩に助けられ、ひたすら泣いて、ショックや恥ずかしさの衝撃が少しだけ収まったところで冷静に考えた。
私を男手ひとつで育ててくれたお父さんには、ずっと幸せでいてほしい。それは本当の気持ちだ。
だけど、お父さんの幸せは再婚しなくては手に入らないものなの?
よく大切な人を亡くしたドラマや映画で『前向きに生きていこう』なんてセリフがあるけれど、亡くなった大切な人を永遠に思い続けるのは『後ろ向きな生き方』なの?
お父さんは真央さんと再婚し、毎日幸せそうにしている。数年前の憔悴ぶりが噓のように、穏やかな日常を送っている。それはきっと、そばにいる真央さんのおかげなんだろう。
だけどその日常は、お母さんの死の上に成り立っている。
もしもお母さんが病気にならなかったら、彼女とはどうなっていたんだろう。
毎日仏壇に手を合わせ、今もこうしてお母さんが大好きだった花を持ってお墓に来ているけど、それはお母さんのことをまだ好きだからじゃないの?