それでもキミと、愛にならない恋をしたい
お母さんを大切に想いながら、真央さんとも結婚するなんて、それって浮気や二股となにが違うの?
「菜々」
お父さんに呼ばれ、ぐるぐると考え込んでいた私はハッとして顔を上げた。先にお参りを済ませたお父さんが、場所を代わろうと墓石の前を空けてくれている。
「どうかした?」
「……ううん、なんでもない」
私はスカートの裾が地面につかないように気をつけながらしゃがみ、ろうそくでお線香に火を灯す。
両手を合わせ、目を閉じたまま、お母さんに話しかけた。
ねぇ、お母さん。お父さんの再婚をどう思ってる? 悲しい? 悔しい? それとも自分はもうこの世にはいないから、仕方ないって思ってる?
お父さんたちの入籍以降、部屋の写真の中のお母さんに何度もそう問いかけた。けれど当然ながら、一度も返事はない。