それでもキミと、愛にならない恋をしたい
そんな私の心の声は繋いだ手から先輩に筒抜けで、頭をくしゃっと撫でられた。
『俺から言い出したんだから迷惑なわけないだろ。もう暗くなるのが早いから心配だし。それに、俺だって菜々と一緒にいたい』
思い出すだけで赤面ものの先輩のセリフは、一ヶ月近く経った今でも脳内で完璧に再現できる。
「あ、その顔……なんか思い出してるでしょ。『好きとか、そういうのじゃないよっ』って言ってたのが噓みたいにラブラブじゃん!」
私の真似をする京ちゃんの腕を軽くぺしっとたたく。
「もうっ、からかわないでよ! それに、京ちゃんだって部活のあと日野先輩と一緒に帰るんでしょ? 美男美女のカップルだって、ふたりの噂で持ちきりだよ」
私が言い返すと、彼女は肩を竦めて苦笑した。
「学校のアイドルと付き合うからには、多少の嫌がらせも覚悟してたんだけどね」
「嫉妬とか通り越すくらい、お似合いだってことだよ」