それでもキミと、愛にならない恋をしたい
ひたすら隠し通そうと決意しているわけじゃないけれど、ふたりのように公言はしないつもりだ。
「いいと思うよ。もしなにか陰口とか言われても守ってあげるけど、言われないに越したことはないし」
「京ちゃんが男前すぎて惚れそうだよ」
「あははっ、佐々木先輩に睨まれちゃうね」
京ちゃんにはお父さんの再婚や楓先輩の能力のことは伏せながら、彼と気持ちが通じたと遊園地に行った翌日に報告していた。
全部を打ち明けられないけれど、話せる部分は包み隠さずに自分の言葉で伝えると、京ちゃんは自分のことのように喜んでくれた。
日野先輩同様、楓先輩も女子からの人気は凄まじく、それこそ彼女だと知られると嫌がらせをされることもあり得そうだ。
とはいえ、卑屈になっているわけじゃない。先輩とのお付き合いは順調で、平日はほぼ毎日一緒に帰っている。クロスバイクを押す先輩の隣を歩くのも、少しだけ慣れてきた。
楓先輩もたまに図書室に来ていたことを聞いてみると、自分の不思議な能力について調べていたらしい。