それでもキミと、愛にならない恋をしたい
機内ではスマホの電源を切っている可能性が高いし、そのまま法要に出ているのならメッセージに気付いていないのも頷ける。特におかしいところはないのに、日野先輩はずっと核心に触れないように話している気がする。
「日野先輩も同じ中学出身なんですよね? どうして楓先輩だけ?」
私が尋ねると、日野先輩は困ったように視線を逸して必死に言葉を探している。話の続きを待っていると、日野先輩は数秒ほど天を仰ぎ、なにかを覚悟したように顎を引いて、じっと私を見据えた。
「いずれ知ることだと思うから話すけど、原口は楓の幼なじみなんだ。同じマンションに住んでて、保育園は別だけど小さい頃から一緒だったって聞いてる」
日野先輩の言葉に耳を傾けながら、私は首筋がざわざわと嫌な感覚におそわれていた。このあとに続くセリフが予想できてしまう。
耳を塞ぎたくなる衝動に駆られつつ、私は衝撃に備えてスカートの上で拳をぎゅっと握りしめた。
「たぶん……付き合ってたんじゃないかな。直接聞いたわけじゃないけど、いつも一緒に帰ってたし。うちの高校に受かるために、よく楓が原口の勉強見てたよ」
想像通りの言葉に、ズキンと胸が痛む。