それでもキミと、愛にならない恋をしたい
「楓はずっと『自分は恋愛する気はない』とか『忘れられない子がいる』って言ってた。でも、菜々ちゃんと出会って、付き合って、めちゃくちゃ幸せそうにしてるでしょ。それはきっと、菜々ちゃんが楓を受け入れてくれたからだと思う。原口の存在を気にしないっていうのは無理かもしれないけど、自信は持っていいはずだよ」
日野先輩が真剣に本心でそう言っているのは伝わった。彼は楓先輩の能力のことも聞いているそうだから、それも込みで『私が楓先輩を受け入れた』と言っているんだろう。だけど、気にしないなんてとても無理だ。
お弁当をひと口も食べることなく昼休みが過ぎ、私はわざわざ来て話してくれた日野先輩にお礼を伝えて教室に戻った。
その間ずっと心配そうな顔をしていた京ちゃんは、ただ寄り添うようにずっとそばにいてくれた。そんな彼女に心配をかけまいと笑って見せたけれど、どうしてもうまくいかなかった。
なんとか六時間目まで授業を受けて、図書室には寄らずに学校を出た。京ちゃんは「どこかパーッと遊びに行く?」と聞いてくれたけど、私のために部活を休ませるわけにはいかない。
かといって家にも帰りたくなくて、私は家の近くの親水公園へ寄ることにした。
夕方四時の公園内は小学生くらいの子たちが元気に遊び回っていて賑やかだ。ひとりになりたかったけど、孤独に耐えられそうにない今の私にはちょうどいい。