それでもキミと、愛にならない恋をしたい
本当なら、あの観覧車に乗っていたのは私じゃなかった。学校の図書室で勉強を教えてもらうのも、意地悪で少年のような笑顔を間近で見るのも、彼の不思議な能力の話を打ち明けてもらうのも、本当は私じゃなくて彼女だったかもしれない。
私は……亡くなった恋人の代わり?
『楓はずっと「自分は恋愛する気はない」とか「忘れられない子がいる」って言ってた』
日野先輩が聞いた話は、きっと原口希美さんのことだよね。彼女を忘れられないでいるのなら、私は二番目ということ?
幸せに輝いていた遊園地の思い出が、グラグラと揺れて崩れていく。
お父さんと再婚した真央さんに疑問を抱いていたのに、私も大切な人を亡くした人を好きになってしまったなんて……。
どくどくどく、と嫌なリズムで鼓動が刻まれる。日が傾き、風が冷たくなってきた。指先がカタカタと震えているのは、きっと寒さのせいだけじゃない。
どうしよう。明日、先輩は学校に来るのかな。いったい、どんな顔をして会えばいいんだろう。
先輩はお墓参りに行ったと私に話してくれるのかな。私はそれにどう答えたらいい?