それでもキミと、愛にならない恋をしたい
「楓先輩もお父さんと同じ……。忘れちゃダメな人がいるのに、どうして……」
指先だけでなく、身体全体が震えだす。両手で自分を抱きしめるようにぎゅっと肘を掴んだけど、一向に震えは収まらない。
次第に目頭がじわりと熱を持ち、ぽろぽろと涙が零れた。
「あれ? やだ、なんで……」
自分がどうして泣いているのか、わからない。
悲しくて、苦しくて、やるせない。感情の吐き出し口がなくて、もどかしい。
お母さんを裏切って真央さんと再婚したお父さんも、そんなお父さんと重なる楓先輩も、受け入れられない真央さんと同じ立場であることも、心が拒否反応を起こしている。
なにより、たった十五歳でこの世を去らなくてはならなかった原口希美さんに嫉妬心を抱いている私自身が、とても醜く感じる。