それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 空港から電車とバスを乗り継いで二時間半。昼前にようやく目的地に着いた。

 住宅街の中にある広々とした境内を訪れるのはこれで二度目。三回忌法要を終えたばかりの希美の両親がこちらに気付き、小さく微笑んでこちらにやって来た。

「久しぶりね、楓くん。今年も来てくれたのね」
「お久しぶりです。希美に線香あげてもいいですか?」
「もちろんよ。こんな遠いところまでわざわざ来てくれて、希美も喜ぶわ」
「僕たちはこれから会食に行くけど、よかったら楓くんも来るかい?」
「ありがとうございます。でも、四時の飛行機を取ってるので」

 まさにとんぼ返りのスケジュールだが、関東と九州の移動距離を考えれば仕方がない。飛行機代だけでなく宿泊費まで両親に工面してもらうのは気が引けた。

 家族同士で交流があったため、命日に墓参りに行きたいと告げると反対はされなかったが、さすがに高校生がひとりで宿泊するとなると泊まる場所などの手配に手間がかかる。いい顔をされないのは心を読まなくてもわかりきっていた。

 それに明日も平日なので、今日中に帰らなくては二日間学校を休むことになってしまう。それは避けたかった。

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