それでもキミと、愛にならない恋をしたい
部活に弓道を選んだのも、人に触れられずにできるスポーツの中から選んだだけだ。意外にも俺には合っていたようで、なにも考えずに集中できるし、今後も続けようと思っている。
『もったいないなぁ。私が楓くらいモテたら、片っ端から付き合うわ。っていうか、私がモテない一因は楓との噂のせいかもしれない!』
『アホか。人のせいにすんな』
『高校入ったら噂もリセットされるし、可愛い制服着て、髪伸ばしてメイクもして、イケメンと付き合うから! 私が青春を謳歌してたら、楓も恋愛に興味が湧くかもよ? だから絶対同じ高校入って、ラブラブっぷりを見せつけてあげる』
『なんだそれ』
『だって、楓って特定の誰かとつるまないでしょ? 友達がいないわけじゃないのに一匹狼っていうか。姉の立場としては、これでも心配してるんだから』
『誰が姉だよ。俺のが誕生日、先だろ。……青春を謳歌すんのは、この問題解けたらな』
『うわっ、因数分解! 楓の鬼ー!』
希美は優しい両親に愛されて育ったからか、天真爛漫でいい意味で欲望に忠実だった。無邪気に笑う妹のような希美が羨ましくて、少しだけ疎ましく感じたのを覚えている。
学校でも男女ともに友達が多く、受験がうまくいけば彼女の望みは叶うはずだった。