それでもキミと、愛にならない恋をしたい
声に乗せた言葉以上に、心の中だけで俺の幸せを願ってくれた。
どこの誰かも聞けず、お礼すら言えなかったけど、彼女のおかげで俺は希美の死を前向きに受け入れ、彼女の分まで生きようと心に誓った。
他人に触れるのは怖くて、特定の人間以外とは一線を引いている。それでも、いくつかの光を見つけた。
「希美が言ってた青春ってやつ、してると思う。彼女もできたし……親友もいる。菜々と日野は、俺の力を気味悪がらずに受け入れてくれた。生きてる時に話してたら、希美も同じ反応してくれた……よな?」
そう思えるのは、きっと菜々のおかげだ。
『この参考書の持ち主は、あなたがそんな辛そうな顔をするのを望んでいないと思います』
あの菜々の言葉で改めて気がついた。
そうだ。希美は血の繋がった両親よりも家族に近かった。その希美が、俺の能力を気味が悪いと貶めるわけがない。俺が絶望を抱えたまま生きていくのを望むわけがない。