それでもキミと、愛にならない恋をしたい
目立つ容姿の彼は人当たりがよく社交的なため、誰からも好かれていた。中学生の頃から常に周囲には人がいる日野だが、実は繊細でたくさん抱えているものがある。
父親が一流企業の社長で、御曹司という立場なのもそのうちのひとつ。それを俺だけに打ち明けてくれた時、俺も秘密を明かそうと決意した。高一の夏の終わりだった。
人の手に触れると心が読めること、どうしてそんな力が自分にあるのかわからないこと、そのせいで両親との関係が破綻していることなど、包み隠さずに語った。
最後に、もしも気持ち悪いと思うのなら、今後一切近付かないという約束も添えた。
最初は信じられないといった顔をしていた日野だが、俺がずっと周囲と一線を引いていたのを見ていたからか、詳細を語るごとに事実なのだと納得したようだ。
『なんていうか……お前も厄介なもん背負ってるね』
そのシンプルな労いが、どれだけ俺の心を軽くしたか、日野は知らないだろう。