それでもキミと、愛にならない恋をしたい
秘密を打ち明けてからも、俺は日野に触れないようにしていた。それは日野を信頼していないからではなく、勝手に心を覗く真似をして彼の信頼を裏切りたくないと思ったからだ。
きっと日野もそれをわかってくれて、近い距離で接しながらも触れないようにしているのだと思う。
そうして、思いの外充実した高校生活の一年目を終えようとしていたところに、俺は再びあの女の子に出会った。
心の中だけで俺の幸せを願い、希美の死を受け入れるきっかけを作ってくれた彼女。もしも会うことができたら、きちんとお礼を伝えたい。できることなら、もう一度あの笑顔を見たい。
そう願っていたのに、再びその子に会えた時、彼女の柔らかな笑顔は鳴りを潜め、今にも泣き出しそうな顔をして歩いていた。
フラフラと進入していった赤信号の横断歩道には、大型トラックが近付いている。大きなクラクションでその事実に気が付いた彼女だが、まるで生きることを諦めているかのようにその場に立ち尽くしていた。
冗談じゃない!