それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 俺は全力で走って彼女の腕を引き、怪我をしないように庇いながら冷たいアスファルトへ勢いよく転がった。無我夢中で痛みは感じなかった。

 トラックの運転手が怒声を浴びせるのに頭を下げ、腕の中の彼女の無事を確認すると、呆然としていた彼女は次第にぽろぽろと涙を零し、ひたすらに泣いていた。

『どうして?』
『忘れたくない』
『助けて……』

 触れた手から流れ込んできた彼女の心の叫びは、聞いているこちらが辛くなるほど悲痛で深刻だった。

『好きっていう気持ちは、どこへいってしまうの? 死んじゃったら、それで終わりなの……?』

 勝手に心の声を聞いてしまったことに罪悪感を覚えながら、それでもアスファルトに座り込んで泣きじゃくる彼女の手を離すことはできなかった。

 繋いだままの手から、彼女の家族に対する思いが伝わってくる。繊細で柔らかいがゆえに絡まると簡単には解けない糸のように、彼女の感情はぐちゃぐちゃに絡まっていた。

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