それでもキミと、愛にならない恋をしたい
俺は両親に対してなにも期待していないし、逆に恨んでもいない。ここまで育ててもらった恩があるだけで、ほぼ無関心だ。
そんな俺が、家族を思うがゆえに涙する彼女に言ってあげられることはなにもない。
女の子が瞳に涙をいっぱいためてこちらを見上げてきた。腕の中で泣く彼女に気の利いたひと言も言えないけれど、守りたいという思いを込めて、そっと頭を撫でた。
無責任に大丈夫だとは言えない。けれど、生きていてくれてよかった。そんな思いだった。
彼女を守れるような男になりたい。あの日の笑顔を、もう一度向けてもらうために。
その後、彼女がうちの高校に入学していたと知った時は、柄にもなく運命だと思った。日野に憧れているのかと一瞬焦ったけれど、どうやら友達の恋がうまくいくように協力しているらしい。
きっかけなんて、なんでもいい。名前と連絡先を聞き、どんどん距離を縮めていった。
菜々が悩んでいるのなら力になりたいと、部活終わりに彼女の自宅の方まで行くことも厭わない。