それでもキミと、愛にならない恋をしたい
たくさん話して菜々自身のことを知るたびに、その純粋さに惹かれていった。
触れる勇気も力を打ち明ける度胸もないくせに、日野やテスト勉強を口実に一緒の時間を過ごし、彼女を想う気持ちだけがどんどん大きくなっていく。
遊園地でのデート中、菜々からあの事故の日のお礼を伝えられ、黙っていられずに力のことを話した。
父親の再婚にわだかまりを持っていることを親友の橘さんにすら話せていない菜々が、俺に全部知られているという事実を受け止めきれるはずがない。
もう菜々との繋がりは切れてしまうのだと諦めかけたが、彼女は想像を遥かに超えた純真さで、再び俺を救ってくれた。
『あの、先輩。手を……繋ぎませんか?』
口下手な菜々が、精一杯気持ちを伝えようと差し出してくれた小さな手に、溢れるほど大きな優しさが見えた。
俺に対する嫌悪感がないだけじゃなく、可愛らしく戸惑う心の声が次々と聞こえてくる状況に、理性が崩壊寸前だった。