それでもキミと、愛にならない恋をしたい
あの日のことを思い出すだけで、勝手に頬が緩む。俺の彼女はこんなに可愛いんだと言って回りたいほど、菜々が可愛くて仕方がない。
考え出すと彼女の声が聞きたくなり、俺は電車を待つ間にスマホを取り出した。
行きの飛行機からずっと電源を切っていたことに気付き、慌てて起動する。学校を休む理由を伝えていなかったから、菜々から体調を心配するメッセージが届いていた。
すぐに電話をかけるが、なかなか出ない。授業中だと思い返し、その後時間をおいて何度かかけてみたが、やはり繋がらなかった。
菜々と想いが通じて以降、平日はもちろん、土日も部活のあとに顔を見るためだけに菜々の家の近くまで行っていたから、丸一日会えないだけで物足りなさを感じる。
「重症だな」
高校二年にしてようやく初恋が実ると、こんなふうになるのか。
自分でも気恥ずかしい感情に振り回されながら、これが希美が言っていた『青春』なんだと可笑しくなった。