それでもキミと、愛にならない恋をしたい
短時間でもぐっすり眠れたのか、寝る前に飲んだ薬のおかげかはわからないけれど、先程のような頭痛や吐き気はない。
横になったまま先輩と話すのは憚られ、上体を起こす。こちらに近寄ってきた楓先輩はベッドの端に腰を下ろすと、私の顔を覗き込んできた。
寝起きの顔や声を知られるのも恥ずかしいけれど、それ以上に顔を合わせるのが気まずい。
咄嗟に俯いてしまい、明らかに視線を合わせるのを避ける私に、楓先輩が怪訝な表情をした。
「昨日、何度か電話したんだけど、もしかして体調悪かった?」
ドキッと心臓が嫌な音を立てた。
日野先輩から楓先輩の元彼女の話を聞いた昼休みにスマホの電源を落として以降、私は一度もスマホを触っていない。きっと連絡がきているだろうと思っていたけれど、どうしても電源を入れることができなかった。
結局、今もスマホはそのまま放置している。