それでもキミと、愛にならない恋をしたい

「ごめんなさい……」
「いや、謝んなくていいよ。昨日会えなかったから、声が聞けたらいいなと思っただけだから」

 柔らかく微笑む楓先輩の言葉に、ダメだとわかりつつもキュンとしてしまった。

 ずるい。何気ない普通の会話をしていても、楓先輩を好きだと思う気持ちは増していく。この言葉は、本来なら私に向けられるべきものではないのに。

「先輩」
「ん?」
「……昨日、お休みしてたのは風邪とかじゃないんですよね?」
「あぁ、ちょっと知り合いの墓参りに行ってた」

 ……知り合い。

 間違ってはいないけれど的確ではない表現に、胸がズキッと痛む。

 原口希美さんとの関係を隠された痛みなのか、楓先輩の中の彼女を〝知り合い〟程度の存在にしてしまった罪悪感に対する痛みなのか、自分でも判別がつかない。

< 181 / 272 >

この作品をシェア

pagetop