それでもキミと、愛にならない恋をしたい
「ごめんなさい……」
「いや、謝んなくていいよ。昨日会えなかったから、声が聞けたらいいなと思っただけだから」
柔らかく微笑む楓先輩の言葉に、ダメだとわかりつつもキュンとしてしまった。
ずるい。何気ない普通の会話をしていても、楓先輩を好きだと思う気持ちは増していく。この言葉は、本来なら私に向けられるべきものではないのに。
「先輩」
「ん?」
「……昨日、お休みしてたのは風邪とかじゃないんですよね?」
「あぁ、ちょっと知り合いの墓参りに行ってた」
……知り合い。
間違ってはいないけれど的確ではない表現に、胸がズキッと痛む。
原口希美さんとの関係を隠された痛みなのか、楓先輩の中の彼女を〝知り合い〟程度の存在にしてしまった罪悪感に対する痛みなのか、自分でも判別がつかない。