それでもキミと、愛にならない恋をしたい
泣きながら叫ぶ私を見て、お父さんが悲しそうに顔を歪めた。
息が苦しい。胸が痛くて、喉が焼けるように熱くて、瞳からはとめどなく涙が溢れている。
お父さんから再婚の話を聞いてから、ずっと言えずに心の底に溜まっていた淀んだ黒い感情が、ようやく出口を見つけたと渦を巻いて吐き出されていく。
「私はお父さんとは違う! 大切な人をそんな風に裏切ったり……裏切らせたりしない!」
お父さんを責めながら、自分に対する戒めの言葉だった。
そして、私にはできない選択をして幸せそうにしているお父さんと真央さんに対する嫉妬心の裏返しでもあった。
私は、原口希美さんを裏切れない。気にしないなんてできない。きっと楓先輩といれば、いつもどこかで彼女のことが頭の隅にあり続ける。
この先のふたりの時間を、本当は自分のものじゃなかったかもしれないと罪悪感を持ちながら過ごすなんて、私にはとても無理だ。