それでもキミと、愛にならない恋をしたい
「出てって」
「菜々」
「お願い、出てって!」
まるで子供の癇癪だ。
だけど、今はなにも聞きたくない。私は再び布団に包まって、もう話したくないという拒絶の意志を示した。
お父さんは今はなにを言っても無駄だと判断したのか、それ以上なにも言わず、静かに部屋を出ていった。
きっと、とても困らせた。それ以上に、とても傷つけた。
お母さんが亡くなって、ひとりで私を育ててくれたのに。いつだって私のことを思って、大切にしてくれていると、ちゃんと感じていたのに。
ひどい言葉を投げつけた。楓先輩にも、お父さんにも……。
部屋に誰もいなくなると、ベッドから下りて机の上に視線を泳がせた。
写真に収まっている三人はみんな満面の笑みで、幸せな家族そのものだ。
私は写真立てを手に取ると、胸に抱きしめ、しゃがみ込んだ。
昨日あれだけ公園で泣いたというのに、まだぽろぽろと大粒の涙が零れてくる。私はそれを拭うこともしないで、自己嫌悪に押し潰されながらひたすらに泣いた。