それでもキミと、愛にならない恋をしたい
第一章
「菜々! 日野先輩と佐々木先輩いる!」
頭の高い位置で結んだポニーテールを揺らして、友人の京ちゃんが振り返った。
教室の窓から下を覗き込む彼女の視線の先には、体操着姿でグラウンドへ向かう二年八組の生徒がいる。
この学校は二年生から文系と理系に分かれ、一組から五組が文系、六組から八組が理系クラス。
中でも五組と八組はそれぞれ特進クラスとされていて、進学校であるうちの学校の中でも成績のいい人たちが在籍している。
二年八組といえば理系の特進で男子生徒が多く、イケメンクラスと名高い。
中でも目を引くのが、日野先輩と佐々木先輩のふたりが連れ立って歩いている姿だ。
日野先輩はアッシュブラウンに染めた髪をツーブロックにしていて、耳にはピアスがあいている。
アイドルのように目がパッチリしていて顔立ちが整っているし、本人も誰に対しても愛想がいいから、実際にファンクラブがあると言われるほど人気がある先輩だ。
対して佐々木先輩はどちらかと言えば寡黙で、少し近寄りがたい雰囲気。