それでもキミと、愛にならない恋をしたい
第八章
楓先輩にお別れの一文を送った後、すぐにまたスマホの電源を切った。
京ちゃんからも連絡が来ていたけれど、返信するほどの余裕がなかった。いつかもう少し落ち着いたら、話を聞いてもらおうと思う。
まだ朝早いから、お父さんも真央さんも起きてはこないはず。そう思って一階に下りて、急いでシャワーを浴びた。うるさくしないように弱風で乾かしたから、少し髪がしっとりしているけど、構わずに洗面所を出た。
すぐに二階の部屋に戻ろうとした時、キッチンから物音がすることに気が付いた。
ドキッと心臓が跳ねる。こんな時間から起きているなんて想定外だ。
私が固まったまま首だけで振り返ると、スリッパの足音を小さくパタパタと鳴らし、真央さんが顔を出した。
「おはよう、菜々ちゃん。さすがにお腹空くかなと思って、おじや作ったの。少しだけでも食べない?」
いつも通りの、優しい微笑みだった。