それでもキミと、愛にならない恋をしたい
「お父さんの再婚にずっと納得できなくて、ずっと現実に向き合わずに逃げてきました。家に帰りたくないから図書室で時間潰したり、家族を避けるように自分の部屋に引きこもったり。昨日の夜、ついに爆発してお父さんに酷いことを言っちゃいました」
唐突に切り出した話に虚を突かれたような顔をした先輩だけど、私が再婚についてどれだけ悩んでいたかを知っているからか、黙って聞いてくれた。
お父さんに対する苛立ちに似た思い、お母さんを亡くした悲しみが遠ざかっていきそうな恐怖心、義理の母になった真央さんに対するやりきれない感情。
それは以前繋いだ手から知られてしまっているけれど、先輩に言葉にして話すのは初めてだった。
「さっき真央さんと……お父さんの再婚相手の人と少しだけ話しました。聞きたいことも聞けたし、真央さんがお父さんとお母さんのことをどう思ってるのかがわかって、彼女がどれほどの覚悟を持っているとかと知って、少しだけ納得できました」
だけど、それは『忘れられない人がいる人を好きになった』側の人の話。
自分以外の誰かを想っている人と、一緒に生きていく選択をした人の覚悟にすぎない。