それでもキミと、愛にならない恋をしたい
「だけど私は……他の人を好きになって再婚したお父さんを、どうしても受け入れられない。まだお母さんを想ってるっていうのなら、再婚なんてするべきじゃないのに……」
真央さんは優しくて、とても強い人だと思う。すべてを受け入れて穏やかに微笑むまでに、どれだけ悩んで涙を流したんだろう。
私は、あの人みたいに全部を受け止めるなんてできない。
「楓先輩も……忘れられない女の子が、いますよね?」
静かに話を聞いてくれていた先輩が、私の急な質問に対して小さく反応する。
「……希美のこと?」
私は頷き、涙が流れてしまわないように天を仰いだ。
何度かまばたきを繰り返し、冬の朝の冷たい空気で瞳をしっかり乾かしてから、楓先輩に向き直る。