それでもキミと、愛にならない恋をしたい

「私のお母さんも原口希美さんも、きっともっと生きていたかったはずです。でも病気や事故で命を奪われてしまった。彼女たちを忘れて他の人と幸せになるなんて……そんな裏切り、私は納得できない……」
「……裏切り?」

 楓先輩がぎゅっと眉をひそめた。

「裏切りって、どういうこと?」
「お母さんを想いながら真央さんとも結婚するなんて、そんなの浮気や二股と一緒じゃないですか。先輩だって」
「俺?」
「学校を休んで遠い九州にまで会いに行くくらい大切な人なんですよね? 忘れられない人がいるって言ってたって、日野先輩に聞きました」
「それは」

 肯定の言葉を聞きたくなくて、先輩に話す隙を与えず、私は続けた。

「好きだから付き合ってて、永遠を誓い合って結婚したのに。きっとお母さんも希美さんも、今でもお父さんや楓先輩を想ってる。天国からずっと見守ってる。忘れないで、ずっと一途に想い続けてほしいのに、どうして裏切るの……」

 捲し立てるように話す私に、楓先輩は悲しそうな顔をして尋ねる。

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